高度化・概要

本年度の研究では、ニクラス・ルーマンによる社会システム理論研究にのっとり、彼の「作動」概念を、(1)「意味選択」の側面から記述すること、および(2)「人格帰属」の側面から記述することをその課題とする。ルーマンのいうシステムの要素は「作動」であるが、とくに社会システムの作動を「コミュニケーション」とよぶ。本研究においては、主に社会システムを観察対象とするが、同様の作動が心的システムにおいても生じるとの前提から、「コミュニケーション」を包含する「意味選択」概念を課題名に採用した。社会システムにおける作動も、心的システムにおける作動も、その基礎には「意味」がある、というわけである。可能な意味の選択肢の中から顕在化したものが作動であり、他の可能性は潜在化される。顕在化した意味がシステムに帰属されるときこれを「行為」とよび、環境に帰属されるときこれを「体験」とよぶ。このとき、とくに「ひと」に意味が帰属されるとき、これを「人格帰属」とよぶ。「人格」は、作動が差し向けられるポイント、帰属のための宛て先として構成されたものである。